屋根裏部屋

幕張カップ2003を終えて

■全ての始まり
学生時代に町を歩いていると、スケートパークの宣伝をするために、デモンストレーションをしているのに出会いました。
スラロームとジャンプランプとレールグラインドをしていました。
僕はスラロームの高速バッククロスを見て「凄い、面白そうだ」と思い、翌日インラインスケートを探しに出かけたのが全ての始まりでした。
当時21歳でした。
この出来事が、僕のスケートのルーツになりました。

■今回のルールができるまで
今イベントは僕が今までにスケートで行なわれたのを見たことがないルールで実施しました。
僕が今まで見てきたイベントではほとんどが順番に一人ずつ1走もしくは2走して、複数の審査員が明文化されていない審査基準(つまりナントナク)にのっとり点数化していき、順位を決めると言うものでした。
ここで告白します。
僕はトリックで入賞したことがありません(僕の記憶では…)。
つまり、入賞経験者にはとことん負けているのです。
なんで、勝てないのかとか色々考えさせられました。
行き着くところは審査員の好みのスケーティングができていないということくらいしか分かりませんでした。
勝っている多くの人はクロス系を多く含み、往復し長い時間を滑るスケーターでした。
僕が得意でない(好きではない)ルーチンです。
じゃ、それを練習すればいいのかというと、そこが納得できませんでした。
皆さんご存知だと思いますが、僕はそのスケート人生の多くを駒沢で過ごしています。
駒沢は普通の人がたくさん来ます。
練習している広場はスケーターを眺めていく人が多いのです。
僕のルーツがそうさせたのでしょう。
僕は見ている人のスケートを始める切欠になれば良いと思って、気合を入れてデモのつもりで滑ってきました。
(一部に本番に強いと言われるのはそのせいかもしれません。)
何年も見ている人々を見ていて気が付いたのは、必ずしも複雑ならば興味を引けるというわけではないこと。
飛燕と大蛇の差なんて絶対に分かりません。
飛燕とバッククロスの難易度の差もよく分からないでしょう。
スピードが乗り、安定していて、ミスが無い、比較的分かり易いものが興味を引けるのだと気が付くのにそう時間はかかりませんでした。
僕が納得できなかったのは、一般人に受けないルーチンの方が高く評価され、しかも明文化されていない曖昧なものであることでした。

もしも、僕が納得できるルールを作るとしたら…<ul><li>技の難易度を決める - 難易度を決めても完成度を測る規準が複雑すぎて無理。誰にも決められそうも無い。</li><li>速さで決める - ある意味はっきりはしているが、芸術性が無視されてはカッコ良い演技が上位になるとは限らない。</li></ul>色々明文化しようとしても、最後には「ナントナク」がカッコ書きされているのを自分に隠し切ることは出来ませんでした。
それに、そんな大会楽しいのか?
出てシビアに争えるスケーターって全日本で何人いるんだ?
大会が成り立たないジャン!
どうやっても「ナントナク」なんだったら、「ナントナク」をもの凄い数集めたら、ある意味公平な答えが出るなぁ…ってぼんやり思いました。
そう、特定の数人のナントナクだと反発もしたくなりますが、1,000人にナントナク「これが好き」とか言われたら、考えさせられますよね。
僕は勝負にこだわります。
そして、観客にどう見られるかもこだわります。
今では光ヶ丘でスタンダードなルールになりましたが、デュアルスラロームレースのルールはそのこだわりと、勝負の場所を作りたくて考えました。
そこに、深沢さんから今回のイベントの依頼の電話が来たのです…。

深沢「幕張でインラインスケートのイベントをやる計画が進んでいるんだけど、スラロームについて教えてくれない?」
村上「スラロームの責任者は誰ですか?」
深沢「まだ、決まってないんだよね。やってくれない?」
村上「むしろ、やらせて下さい。」
それは9月末でした。
そして、大会が開かれるのが確定したのが10月の末でした。

■伝えたかった事
勝負するって面白いでしょ?悔しいでしょ?考えさせられるでしょ?ただ滑るんじゃなくて、人(一般人)にどう見られるのか考えながら滑ってもらいたいと思っていました。
それが、今回の大会では少しは伝わったのかと思っています。
そして、結局は真の勝者とか敗者とか存在しない大会であることもナントナク伝わったと思います。
どこぞで、スラロームはダサイ、キモイと言われているのが我慢できなくて、打開策を考えていました。
少しでも考えてもらえる切欠になれば嬉しいです。

■スタッフへの感謝
準備期間が一ヶ月と言うとんでもないスケジュールの中、ボランティアでノウハウの提供や当日寒い中スタッフを手伝ってくださった方々にこの場を借りて、もう一度お礼を申し上げたいと思います。

みんな「ロマンをリアルにするために努力できる人」で、嬉しかったです。
みなさんが居なければ、こんなに楽しい大会は出来ませんでした。
僕は世界で最も幸せなスケーターです。

#真のロマンチストは究極のリアリストでなければならない

※この記事は なしじゅんのページ に寄稿したものです。

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